修了生に聞く

陶芸研究所の修了生に制作活動や現在の生活について」インタビューした記事です。

01. 加藤真美 (第2期生)

02. 憲児陶苑【 堀田拓見(第30期生)・ 堀田之江(第28期生)】

03.岡歩 (第23期生) 制作中…

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01

陶芸作家

加藤真美さん

愛知県東海市出身

陶研 第2期生(1986年修了)

やきものとの関わりは、病気で体調を崩しがちだった学生時代がきっかけなのかもしれない。学業を続けられない私に、父が陶研を紹介してくれたのがはじまりです。

当時、陶研への入所に戸惑いながらも陶芸について基礎から学んだけれど、土の「やさしさ・寛容さ」までは全く理解が及んでいませんでした。

惑星ープラネットー(2022年)

陶研修了後は、陶芸家のもとで2年半内弟子として働き、その後独立。広く家庭で望まれる使いやすい器をつくっていました。私の器は丈夫で使いやすいと評価をいただくこともあって、何の疑いもなく作陶生活を営んでいました。そんな中バブルが崩壊し、やきもの屋を取り巻く状況が一変しました。取り扱いギャラリーやショップが次々閉めてゆき、やきもので生計を立ててゆくことができなくなりました。

そんな失意の中、ある作家に「うつわは所詮うつわでしかないけれど、私のはアートだから」と言われ衝撃を受けました。「うつわ」という言葉でまず対象をカテゴライズしてしまい、即ちアートになり得ない、とする見解には納得できませんでした。そうではない、と私は自分に証明しなくてはなりません。

少なからず傷つき悲しい想いでつくっていると、何となく私なりに気持ちを込められた、と思うものができるようになりました。それはやはりうつわの形をしていました。曲面で包まれる豊かな内的空間をかたちづくっていると、徐々に慰められ、認めたくない自分に相対し受け入れ許せるようになっていったのです。自分にもできた。綺麗だと思う。これが誰にも伝わらないのであれば、やきものをやらなくてもいいと思いました。

そこで恐る恐る長三賞常滑陶芸展に応募してみたのです。その時審査員をしていらした鯉江良二さんが、「目立たない、地味な作品だけどぼくには音楽が聴こえる」と、審査員賞に選んでくださいました。その言葉を伺って、全ての人にはわかってもらえないかもしれない、だがそういうアンテナを持っている人にはちゃんと感じてもらえるんだと感激し、大いに自信になりました。

月下(2022年)

つくっていく過程で、いろんなその先の形が浮かんできて、次の作品への意欲が湧いてくる。次はこうしようと思ったり、または土をいじっている途中にどんどん新しい形が見えてくる。勢いあまって、想定していたものから大きく逸れてしまうことも。

土はいつも私の好きにさせてくれる。どう手を動かしても受け入れてくれる。無理にやれば壊れるけど、特に磁器なんかは乾いてからでも盛ったり削ったりできるし、いつまでもいじらせてくれる。土は、やさしいね。最後は窯の中で焼かれて死んでくれる。もうそうしたら土には戻れない。砕いて何千年もしない限りは。

あぁ、土に、やきものに出会えて良かったと感じる。

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加藤真美さんは、中学1年から3年間、父親の赴任に付いてシンガポールに渡る。近所の家族は多国籍で、同時代の外国の子どもたちと遊ぶのが日常だったこともあり、言語に長けている。その経験は、陶芸家になってから自ずと海外へ活動の場を広め、他国のアーティストとコミュニティを膨らませる。

海外のアーティストやギャラリーとの接点は日本で行われた国際コンペなどがきっかけで、帰国後に現地へ招待してくれたり、展覧会に参加することもしばしば。

また、SNSで自身の作品を発信することで海外のアーティストやギャラリーとの繋がりを強め、作品のオーダーのみならずワークショップ講師としても迎えられ、土のやさしさや、土いじりの楽しみを伝える。

海外でのワークショップの様子

ワークショップでは、アースポットという地面に穴を掘って碗を打ち込むものや、手びねりやタタラによる自由な造形、または現地の灰を用いた灰釉などをプログラムとする。特に灰釉は、現地で調達することをこだわりとし、たとえば、サトウキビやアボガド、シダ類、暖炉を用いる地域では樫の木の灰なども釉の原料とする。仏教圏では寺院にある線香の灰を集めてもらったこともあるという。

自然釉を多く扱う日本ならではの灰釉の奥深さを伝えることは、陶芸を通じて成せる、よい国際文化交流でもある。

常滑のような長い歴史のあるやきもの産地で陶芸を学んだことは、異国でのコミュニケーションを活発にする。例えば600年前の陶片をもって出向けばたいへん喜ばれるという。

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